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令和7年の所得税改正(年末調整に関係する主なポイント)

今回は、令和7年の税制改正の中でも、私たちにとって身近な「所得税」のうち、年末調整に関係するポイントをご紹介いたします。

はじめに:用語のご説明
記事中に出てくる言葉について、簡単にご説明します。
 ①合計所得金額
年収(=収入)とは異なります。たとえば収入が、お勤め先からの給与のみの方であれば、給与収入から「給与所得控除」を差し引いたものです。
 ②所得控除
法律にて、一定の要件をみたす場合に適用ができるものです。合計所得金額から所得控除を引いた額が「課税所得」となり、これに税率をかけて所得税が計算されます。

1.給与所得控除の見直し
給与収入に応じて差し引かれる「給与所得控除」の金額が見直されました。
改正後の給与所得控除額(令和7年以降)

給与等の収入金額 給与所得控除額
190万円以下 65万円
190万円超〜360万円以下 収入×30%+8万円
360万円超〜660万円以下 収入×20%+44万円
660万円超〜850万円以下 収入×10%+110万円
850万円超 上限195万円

2.基礎控除の見直し
「すべての人に共通して適用される」控除です。所得に応じて金額が変わります。

改正後の控除額(令和7年以降)

合計所得金額 控除額(住民税は変更なし)
132万円以下 95万円
132万円超〜336万円以下 88万円(令和9年以降は58万円)
336万円超〜489万円以下 68万円(同上)
489万円超〜655万円以下 63万円(同上)
655万円超〜2,350万円以下 58万円
2,350万円超〜2,400万円以下 48万円
2,400万円超〜2,450万円以下 32万円
2,450万円超〜2,500万円以下 16万円
2,500万円超 控除なし

3.扶養親族・配偶者などの所得要件の変更
以下のように、控除を受ける対象者(扶養親族など)の所得要件が緩和されました。

控除の種類 対象者 改正前の所得要件 改正後の所得要件
扶養控除 同一生計の扶養親族 48万円以下 58万円以下
配偶者控除 同一生計の配偶者 48万円以下 58万円以下
勤労学生控除 納税者本人 75万円以下 85万円以下
ひとり親控除 同一生計の子 48万円以下 58万円以下

4.【新設】特定親族特別控除の創設
これまでは、お子さんの収入がある程度を超えると扶養控除が使えないというケースがありました。
今回の改正では、収入が一定範囲内なら扶養控除の代わりに「特定親族特別控除」が使えるようになりました。
適用を受けるためには、つぎの要件を満たす必要があります。(要件を満たされるお子さんが「特定親族」となります。)
 ①生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者、専従者給与を受給されている方は除かれます。)
 ②その親族の合計所得金額が58万円超〜123万円以下
なお、2以上の居住者の特定親族に該当する親族がいる場合はいずれか1人で適用ができます。
例えば、旦那さんと、奥さんとの間に、特定親族に該当するお子さんがいる場合、この控除を受けられるのは、旦那さん又は奥さんとなりますので、どちらか1人を対象に選択する必要があります。
その場合の控除額は、特定親族の合計所得金額に応じ、つぎのとおりとなります。

控除額一覧

特定親族の合計所得金額(給与収入の目安) 控除額
58万円超〜85万円以下(123万円超〜150万円以下) 63万円
85万円超〜90万円以下(150万円超〜155万円以下) 61万円
90万円超〜95万円以下(155万円超〜160万円以下) 51万円
95万円超〜100万円以下(160万円超〜165万円以下) 41万円
100万円超〜105万円以下(165万円超〜170万円以下) 31万円
105万円超〜110万円以下(170万円超〜175万円以下) 21万円
110万円超〜115万円以下(175万円超〜180万円以下) 11万円
115万円超〜120万円以下(180万円超〜185万円以下) 6万円
120万円超〜123万円以下(185万円超〜188万円以下) 3万円

➣合計所得金額が58万円以下の場合は、従来のとおり扶養控除の対象となります。

(年末調整での手続き)
令和7年の年末調整では、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要となります。
勤務先に、年内最後の給与支払日前までに提出しましょう。

おわりに
今回の税制改正では、「基礎控除の金額」や「扶養控除の要件」など、身近な変更が多数含まれています。
とくに、お子さまがアルバイトをされている家庭では「特定親族特別控除」の新設が大きなポイントになります。
不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

最後に
本コラムの内容は、令和7年3月31日に可決された「令和7年税制改正法」に基づいて作成しております。
できるだけ専門用語を避け、平易な言葉でご説明しておりますが、一部表現が法律上の定義と異なる場合があることをご了承ください。
また、税の取扱いは実態や取引形態によって異なる場合があり、法律上の適用関係については個別の検討が必要です。
制度への対応に不安をお持ちの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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