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確定給付企業年金(DB)について

今回は「確定給付企業年金(DB)」についてご紹介いたします。
前回のコラムでお伝えした「企業型確定拠出年金(DC)」とよく似た制度ですが、大きな違いもあります。
会社が福利厚生の一環として導入でき、税金や社会保険料の面でメリットがある点も共通しています。
(前回のコラムはこちら)
👉企業型確定拠出年金(企業型DC)について
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1.制度の概要
確定給付企業年金(DB)は、社員や役員(以下「社員等」)の退職金や年金を会社があらかじめ約束し、そのために積立や運用を行う制度です。
言い換えると、「会社が責任をもって退職金の積立をしていく仕組み」です。
DBには次の2つの方式があります。
 基金型:年金を運用するための「基金(特別な法人)」を設立して運用を任せる方式
  ・単独型 … 社員等の人数が多い会社が自社だけで基金を作る場合
  ・複数事業主型 … 複数の会社が集まって共同で基金を作る場合
 規約型:会社が自社でルールを作り、信託銀行や生命保険会社などに運用を依頼する方式
掛金(将来の退職金の積立金)の準備方法は次のいずれかによります。
 ①会社が全額を負担する
 ②社員等の任意で負担し、給料の一部を掛金にあてる(選択制)
 ③上記の併用
加入できるのは、会社が対象とした社員等のうち 70歳未満で厚生年金に加入している方です。
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2.企業型DCとの違い
「企業型DCと同じでは?」と思われるかもしれませんが、大きな違いがあります。

項目企業型DC確定給付企業年金(DB)
掛金を運用する人社員等本人会社や基金
将来の退職金額確定していないあらかじめ確定している
運用リスク社員等が負担会社が負担

つまり、DCは「自分で運用する貯金箱」、DBは「会社が約束してくれる退職金」のような仕組みです。
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3.掛金の上限
掛金には上限があります。例えば「福祉はぐくみ企業年金基金」の場合は次のとおりです。
 ①他の企業年金制度がない場合 … 月40万円または給料の20%のうち少ない方
 ②iDeCo(個人型確定拠出年金)などと併用する場合 … 上記と同じですが、iDeCoの拠出額が調整されます
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4.受け取れる時期と方法
(1) 受給の時期
 ①原則:退職時に受け取り
 ②例外:休職・育児休業・介護休業のときに受け取れる場合あり
(2) 受給の方法
 ①退職時に一時金としてまとめて受け取る … 税法上は「退職所得」
 ②休業、休職等によって一時金を受け取る…税法上は「一時所得」
 ③年金形式で分割して受け取る → 税法上は「公的年金等に係る雑所得」
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5.制度のメリット
 ①会社が支払う掛金は、法人税の計算上「損金」として扱えるため、会社の税負担を軽減できる。
 ②選択制を利用すれば、社員等の社会保険料が軽くなる。
 ③会社の社会保険料負担も軽くなる。
 ④役員も加入可能。(ただし、役員の家族以外に社員が1名以上いる会社に限る)
(例)給与40万円の社員が、8万円を掛金に回す場合→ 社会保険料や税金の計算は「32万円」を基準に行われます。
 ⑤(はぐくみ企業年金であれば、)掛金の上限が企業型DCより高く設定が可能。
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6.制度のデメリット
 ①制度を運営するためのコスト(導入費用や管理費)がかかる
 ②拠出したお金は原則、退職まで引き出せない
 ③運用がうまくいかず積立不足が生じた場合、会社が不足分を負担する必要がある
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7.まとめ
 確定給付企業年金(DB)は、社員にとっては安心感がある一方、会社にとってはリスクやコストを伴う制度です。
会社の状況や方針に合わせて、他の制度と比較検討することが大切です。
制度の詳細や導入方法については、ぜひ当事務所へご相談ください。
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ご注意
 本コラムは 令和7年8月31日現在の法令 に基づいて作成しています。
平易な表現を心がけていますが、一部は法律上の正確な定義とは異なる場合があります。
 また、税務上の取扱いは実態や取引形態によって異なる場合があり、個別の検討が必要です。制度に関して不安をお持ちの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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